Contents
- 1 はじめに
- 2 当参考書ルートの特徴(注意点)
- 3 メイン参考書ルートの概要
- 4 初級:英語初心者〜難関高校入試レベル
- 4.1 ★ 中学英語をもう一度はじめからていねいに
- 4.2 チャート式シリーズ中学英語
- 4.3 ■【英語学習の道標 ② 】実践で使える英文法 ①
- 4.4 ■【英語学習の道標 ③ 】英単語の勉強法
- 4.5 世界一わかりやすい中学英単語
- 4.6 世界一わかりやすい中学英単語【難関高校対策編】
- 4.7 高校入試ランク順中学英熟語450改訂版
- 4.8 ★ 八澤のたった7時間で英文解釈
- 4.9 ■【英語学習の道標 ④ 】新しい知識のインプット方法
- 4.10 ■【英語学習の道標 ⑤ 】リーディングとリスニングの学習法
- 4.11 ☆ 番外編:ブログ式総合英語 〓TRINITY〓
- 4.12 英語長文レベル別問題集1超基礎編【改訂版】
- 4.13 英語長文レベル別問題集2初級編【改訂版】
- 4.14 ■【英語学習の道標 ⑥ 】 リスニング入門〜発音とチャンクリスニング〜
- 4.15 英語リスニングの鬼100則
- 4.16 全国高校入試問題正解英語
- 4.17 英語長文難関攻略30選
- 4.18 英語長文テーマ別難関攻略30選
- 4.19 英語難関徹底攻略33選
- 4.20 ■【英語学習の道標 ⑦ 】実践で使える英文法 ②:パターンプラクティス
- 4.21 英語のハノン初級
- 4.22 英語のハノンフレーズ編
- 4.23 ■ タイムテーブル -初級-(1年プラン)
- 5 中級:高校初級〜共通テストレベル
- 5.1 ジーニアス英単語2200
- 5.2 ジーニアス英熟語1000
- 5.3 ★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本
- 5.4 ■【英語学習の道標 ⑧ 】リトリーバル学習と分散学習
- 5.5 ★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本 徹底反復練習
- 5.6 ★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本 実践演習
- 5.7 ★ ALL IN ONE Basic
- 5.8 ★ 英文熟考上
- 5.9 動画英文法2700
- 5.10 英文法の鬼100則
- 5.11 英文法の鬼1000問
- 5.12 関正生のThe Rules英語長文問題集1入試基礎
- 5.13 関正生の英語長文ポラリス0基礎レベル
- 5.14 英語長文レベル別問題集3標準編【改訂版】
- 5.15 英語長文レベル別問題集4中級編【改訂版】
- 5.16 ★ ALL IN ONE
- 5.17 ★ 英文熟考下 改訂版
- 5.18 関正生のThe Rules英語長文問題集2入試標準
- 5.19 関正生の英語長文ポラリス1標準レベル
- 5.20 ■【英語学習の道標 ⑨ 】共通テストと情報処理テクニック〜スキミングとスキャニング〜
- 5.21 2025年用共通テスト実践模試(1)英語リーディング
- 5.22 2025年用共通テスト実践模試(2)英語リスニング
- 5.23 改訂版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本
- 5.24 英語のハノン 中級
- 5.25 英検2級 英作文&面接完全制覇
- 5.26 ■ タイムテーブル -中級-(1年プラン)
- 6 上級:難関大入試〜最難関大入試レベル
- 6.1 ■【英語学習の道標 ⑩ 】大学受験と英検に必要な英単語数
- 6.2 速読英単語 上級編 改訂第5版
- 6.3 出る順で最短合格!英検準1級単熟語EX 第2版
- 6.4 英語の構文150 UPGRADED 99 Lessons
- 6.5 基礎からの新々総合英語(チャート式シリーズ)
- 6.6 ENGLISH EX
- 6.7 英文読解の透視図
- 6.8 ■【英語学習の道標 ⑪ 】ミクロな読み方とマクロな読み方
- 6.9 パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編
- 6.10 パラグラフリーディングのストラテジー2 実践編 私立大対策
- 6.11 パラグラフリーディングのストラテジー3 実践編 国公立大対策
- 6.12 関正生の The Rules 英語長文問題集3 入試難関
- 6.13 関正生の英語長文ポラリス2 応用レベル
- 6.14 英語長文レベル別問題集5上級編【改訂版】
- 6.15 英語長文レベル別問題集6最上級編【改訂版】
- 6.16 関正生の The Rules 英語長文問題集4入試最難関
- 6.17 関正生の英語長文ポラリス3発展レベル
- 6.18 英検準1級英作文問題完全制覇
- 6.19 英語のハノン上級
- 6.20 ■ タイムテーブル -上級-(1年プラン)
はじめに
この記事では、当サイト管理人がこれまでに取り組んできた英語学習と指導経験に基づいて、英語初心者がゼロから英語学習を開始して東大・京大・国医などの最難関大学入試を突破する1ための参考書ルート2を紹介します。
これは筆者が「初心者に戻って学習し直すなら?」という問いに対する答えであり、誰にとっても効果的なルートであると保証するものではありません。3
実際には学習者の特性に合わせて教材を変更したり、必要に応じて適切な指導者からアドバイスを受けることも必要になるのでご注意ください。
- 日本生まれ日本育ち(純ジャパ)
- 東京大学大学院修了
- 旧センター試験英語で98%
- 2023年度共通テストリーディング満点
- 海外の一流大学院へ長期留学
- 国立医学部受験生などを指導(英語、数学など)
筆者の英語力の根幹部分は、大学受験の勉強を通してつくられました。大学受験では、塾や家庭教師に頼らず、ほぼ市販の教材のみで学習しました。
海外大学院への留学準備で受験した TOEFL iBT のリーディングとライティングのセクションで満点近く得点できたのも、大学受験を通して英語の基礎を徹底して学んでいたからです。
大学受験で要求される英語力を身につけることは、実践的な英語力の基盤となります。
これから英語を学び始めるみなさんには、この大学受験レベルの英語力を効率的に身につけていただき、さらにその先の実践的な英語トレーニングへと早く進んでほしいと願っています。
今回の参考書ルート(一部にアプリなどを含む)の紹介記事は、そのような願いを叶えるべく作り上げたコンテンツとなります。
ここでは単なる参考書紹介にとどまらず、各学習段階においておさえておくべき勉強のコツを随所に織り込みました。是非とも最後まで通読していただき、学習の道標として何度も確認に戻られることを期待いたします。
当参考書ルートの特徴(注意点)
英語講師として、中学生の定期テスト対策から国立医学部受験対策まで多くの指導経験がある筆者が、既存の市販教材で最難関大学入試に向けて学習するならどのようなプランが最適かを考えたのが今回の参考書ルートになります。
まず始めに、この参考書ルートに取り組む上での前提条件に触れておきましょう。
- アルファベットの知識
- 最低でも毎日2〜3時間の学習時間を確保する
- 最低でも2年間継続して学習する
※大学受験学年の1年でこのルートを1からやるのは無謀です。時間的に余裕のある中学生から始めて最低でも2〜3年かけてやることを想定しています。
続いて、この参考書ルートに沿って学習することのメリットを挙げておきます。
- (少し時間はかかるが)盤石な基礎力が身に付く
- 早い段階から英文解釈力が身に付く
- チャンクリーディングの意識づけができる
- リーディング力とリスニング力を同時にアップできる
- 英語ライティングおよびスピーキングの型が習得できる
メリットばかりでは偏った情報となってしまうので、デメリットも挙げておきます。
- 習得に根気が必要な参考書が複数含まれている
- 教材の数が多い(調整が必要かも)
- 進度がはやい(中学生で難関大学受験レベルまで行く)
※時間に余裕がない人、勉強体力がない人は参考書ルートをスリム化して、絞り込んだ参考書だけをやり込む方針で問題ありません。参考書ルートの作成方法に関しては別の記事で取り上げます。
今回の参考書ルートは、初心者から始めて大学受験の最高ランク帯を目指すものなので、当然、越えなければならない壁がいくつも存在します。内容が濃くかつ分量が多い参考書群が、何度もあなたの学習意欲を削りにきます。
特にメインテキストとして指定している「黄リー教」シリーズと「ALL IN ONE」シリーズが分厚い壁となるでしょう。文法のアウトプット教材として採用している「動画英文法2700」や「ENGLISH EX」に関してもかなりの量があるので注意が必要です。4
そして、今回の参考書ルートの最大の特徴の1つである「英語のハノン」シリーズの採用もかなりの曲者です。中学レベルの基本文法と語彙を学んだらすぐ、「英語のハノン 初級」に接続するプランになっていますが、知らない表現や理解がまだ怪しい文法をふんだんに使った例文が大量に出てくると思います。
わからない文法や語彙はなるべく調べてほしい5のですが、中級の学習まで進んでからまた戻ってくる方が上手くいくかもです。(うまく接続できそうになければ、中級の学習がある程度進んだ段階で、「英語のハノン 初級」をスタートして下さい。)
「英語のハノン」シリーズはドリル練習がメインですが、最初は1日にドリル1〜3個分程度におさえて進めて下さい。ゆっくりとでいいので、本に書いてある指示をよく守ってこの練習ドリルを習慣化して下さい。
大量の参考書群に加えて、想定している学習進度の早さにも注意が必要です。具体的には中高6年分の英語を2〜3年で走り抜けるプランとなっています。
ただし学習期間については適宜修正していただいて構いません。挑戦したい方向けの目安と言った感じです。
最速で駆け抜けることに成功した場合、中学生ながらに東大受験生並みの基礎力が身につくことも十分にありえます。そうなれば、高校でより実践的な学習にシフトしつつ、英検1級などを目標にすると理想的です。
メイン参考書ルートの概要
今回紹介する【受験英語を完全制覇する参考書ルート】(一部アプリなどの教材を含む)は、東京大学、京都大学、国立医学部などの最難関大学受験において、二次試験対策に余裕を持って入れるだけの盤石な基礎を作り上げるものです。
前置きが長くなりましたが、ここでルート全体を見ておきましょう。
今回のルートのメインパートは初級〜上級までの部分です。超級部分はオマケ程度に考えてください。
金縁実線枠はメインテキストになります。メインテキストは何度も繰り返し復習してほしい参考書です。参考書ルートをスリム化する場合でも省略しないでください。6
破線枠は参考書ルートをスリム化する場合の候補(青字テキストが省略候補です)になります。その他実線枠はスリム化非推奨になります。
ルート図解の上級パートにある「二次対策」の項目には過去問演習や問題形式別の対策などが入りますが、二次対策以外の内容を上級まで完全に消化しきれば、最難関大以外であれば十分に合格が狙える英語力が身に付きます。これだけの基礎力を身につけておけば、より実践的な英語力を身につける上でも大きな助けとなるので最難関大学を受験しない人にも、参考にしていただきたいと思います。
ただし、この「完全に」やり切るというのがかなり厄介で、このような参考書ルートを紹介すると、教材だけを揃えて、各教材の上辺の部分だけ学習して(最悪の場合は全く手をつけず)、真の英語力をつけるための勉強を疎かにしてしまう人が大量発生します。
これはネット上にあふれる参考書ルートに、ゴールイメージに対する言及がほとんど含まれていないからとも言えます。
この参考書をやればどの大学に受かるとか、この大学に受かるためにはこの参考書まで必要という情報は溢れていても、その参考書で身につけるべき内容の説明が薄いのです。この記事ではそのようなメタな情報も多く提供していきます。
■【英語学習の道標 ① 】目指すべき英語力〜5つの目標〜
ここではまず参考書ルートを通して目指すべき英語力のイメージを明確にしておきましょう。
そもそも英語力を分解すると、一般に「文法」「単語熟語」「リーディング」「リスニング」「ライティング」「スピーキング」などに大別されます。この各項目に対して、何を目指すのかという明確なビジョンを持っているでしょうか?
学習のゴールイメージは非常に重要です。私たちが目指す英語力は、その明確なゴールを目指すことでのみ獲得できるからです。本格的に英語学習をスタートする前に、具体的なゴールイメージを確認しておきましょう。
① 構文解析力(英文解釈):自分の言葉で各英文の構造を、「体系的な英文法知識」に基づいて、説明する力
② 直読直解力:①を前提として、英文をその語順のまま、意味のカタマリで理解していく力
③ 聴解力:②+音声学に関する知識を前提として、英語の音声をその語順のまま意味のカタマリごとに理解することができる力
④ 表現力:①〜③までを前提として、生の英語を多読・多聴して、習得したい表現を徹底的にマネしてみることでスピーキング、ライティングで使える表現を獲得する(②と③の副産物でもある)
⑤ 発信力:①〜④(使える英文法と単熟語)を前提として、英語の語順で考えて、それを適切な発音で再現する力(チャンクスピーキング)※ライティングもほぼ同様
①は「文法と英文解釈」、②は「リーディング」、③は「リスニング」、④⑤はともに「ライティング」「スピーキング」に対するゴールイメージになります。また⑤には「文法」「単語・熟語」を実践の場で使えるレベルで習得するというゴールも含まれています。
基礎力練磨編と4技能実践編
メイン参考書ルートの解説に戻ります。もう一度ルート図解をご覧ください。図解を見るとわかるように、ルートは上段と下段に大別され、下段が基礎力錬磨編、上段が4技能実践編となります。
まず基礎力練磨編では全ての英語学習の基礎となる「英単語・熟語」「英文法」「英文解釈」を徹底的に鍛え上げます。
続いて4技能実践編では基礎力錬磨編で鍛え上げた基礎力を土台に「リーディング」「リスニング」「ライティング」「スピーキング」の実践演習を中心とした訓練を行います。
また、基礎力錬磨編と4技能実践編はそれぞれ初級、中級、上級、超級にレベル分けされています。
学習者は各級において基礎力錬磨→4技能実践編の順で学習を進めることになります。より詳細な学習順については各級ごとの参考書紹介と併せて説明しますが、基本は記事内の掲載順で学習することになります。
最後に各パートを完走した時の到達イメージを共有しておきましょう。
まず基礎力練磨編を上級まで習得できれば、その後の英語学習において英文法と英文解釈を追加で学習する必要はほぼなくなります。教材の量が多く感じるかも知れませんが、裏を返せばこれでほぼ全てなのです。少しやる気が出たでしょうか?
英文法などとは異なり、英単語・熟語については上級以降も継続的な学習が必要となります。とはいえ、日本の大学入試で必要な語彙(6000語レベル)は上級レベルまででほぼ網羅することができるので安心してください。
4技能実践編も併せて上級まで習得できれば、4技能全てで英検準1級レベルまで到達可能7です。
初級:英語初心者〜難関高校入試レベル
ここからは各級ごとに、①各教材の学習順(基本は掲載順)、②各教材の学習法(注意点)を丁寧に解説していきます。まず初級の基礎力錬磨編から見ていきましょう。
★ 中学英語をもう一度はじめからていねいに
記念すべき1冊目は「中学英語をもう一度はじめからていねいに」です。こちらは東進ハイスクールの大岩先生が中学生向けに書かれた英文法の講義本です。図説では「大岩もう一度」と表記しています。
最も基本となる英単語のまとめがついているので、同時に語彙力を強化することができます。
単語の発音に関する注意ですが、この本の単語まとめに限らず、今回紹介する英単語帳には全て発音記号による発音表記が採用されています。付属の音声で発音を確認するのはもちろんですが、発音記号で確認できるようになると便利です。
カタカナ発音を早く卒業するためにも、この段階で発音記号を並行して学んでおくのがおすすめです。
「英語リスニングの鬼100則」の2章と3章を先に学んでおきましょう。日本人の英語学習者が知っておくべき母音と子音8の発音がまとめられています。
発音記号を学んだら、掲載単語全体に目を通して発音と意味を確認してください。最初から覚えようとしなくとも大丈夫です。確認が済んだら、文法の解説パートを最初のページから順に進めていきます。
まずは各章ごとの内容理解を優先してください。覚えるのは後回しです。1章ごとに内容の理解がある程度固まったら、掲載されている確認問題で簡単な確認を行います。この時点ではまだ暗記できていなくても大丈夫です。
確認問題を解いたら、さらなる演習を通して、自然に暗記している状態を目指します。演習にはチャート式中学英語シリーズ(特に準拠ドリル)を使います。1章ごとに対応部分を併用するのがおすすめです。
チャート式シリーズ中学英語
大岩本と並行して、英文法のドリル演習を進めます。この演習には「チャート式」シリーズを使用します。解説部分で大岩本の補完・復習をしつつ、確認問題で学んだ知識を確認しましょう。さらに「準拠ドリル」で問題をたくさんこなせば、知識が定着して盤石な基礎が出来上がります。
ちなみにチャート本誌には解説動画も付いているので、大岩本で理解できていない部分を補完するのに役立つでしょう。チャート本誌の解説の補完にもなっているので、積極的に活用してください。
最後の仕上げに、チャート本誌の例文を用いて、①日本語→英語、②英語→日本語の変換トレーニングを行います。全ての例文をスラスラと言えるところまで練習して下さい。文法知識をライティングやスピーキングでも使えるようにするための第一歩です。
英文法の基礎的内容はほぼ全て中学で扱われます。この段階で扱われている事項をしっかりと理解して、それをどれだけ血肉化できるかがその後の英語学習の成否を決定します。たくさんの問題を解きながら体で覚えてしまう必要があります。
最初から覚えることが多くて大変だと感じるかもしませんが、どうにか耐え抜いてください。
■【英語学習の道標 ② 】実践で使える英文法 ①
従来の受験英語教育では英文法は、SVOC構文解析(英文解析)のための基礎であったり、パズル的な英文法の問題を解くための知識に過ぎませんでした。
英語による発信力重視、4技能教育などが騒がれるようになった昨今ではその意味合いも変わりつつあるかもしれません。
例えば、アメリカの名門大学であるイェール大学の外国語教育には大いに学ぶべきところがあります。
イェール大学の外国語の授業では、文法をとても細かく教えてくれます。…(中略)… イェールでは「文がスラスラと言えるかどうか」までをじっくり試され、評価がつけられます。…(中略)… とにかく声に出して例文を言えるようにする。そうやって文法を身体に染み込ませないかぎり、実践で使えるだけの必要な反応速度が育たないのです。
「世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法」 斉藤淳 p.106, 107より引用
このように、世界屈指の名門大学でさえ、外国語の文法を実践で使えるようにするためには地道な努力が必要であると説いているわけです。
イェール式とも被りますが、実践で使える英文法を身につけるため(英文法のアクティブ化)の方策のひとつとして、「英文法書の例文がスラスラとでてくるようにする」という方法はかなり強力です。チャート式シリーズを使ったドリル演習でも、この方法を採用しています。
加えて、ライティングとスピーキング用の教材として「英語のハノン」シリーズを当参考書ルートでは採用していますが、こちらにはパターンプラクティスと呼ばれる有名な学習法が用いられており、これもまた英文法のアクティブ化に有効であることが知られています。
■【英語学習の道標 ③ 】英単語の勉強法
英単語帳を使った学習に入る前に、日本語を介さない英単語習得の重要性を強調しておきます。これは英語を英語のまま理解したり、英語スピーキングの能力を高めるために必要な考えです。
- 英語から日本語:①英語の音声を聞いて瞬時に日本語での意味を把握できるようにします。②日本語を介さない英語→状況、イメージという回路を作り上げます
Hello.と言われた時、それを毎回日本語の「こんにちは」だと訳さずとも挨拶されているという状況は理解できると思います。
またappleと聞いて「りんご」という日本語を思い出すよりも、本物の果物のイメージが浮かんでくるかと思います。
このように英語音声→状況、イメージという回路を作るように意識してください。
絵で表現できない抽象的な単語も、どのような状況で使われるかを理解し、それに紐づけることで瞬間的な理解が可能です。
- 日本語から英語:①日本語訳→状況、イメージ→英単語の回路を作り上げます。②日本語を頭から追い出して状況やイメージから直接英語に変換できるようにします。
日本語訳→状況、イメージ→英単語。
英語音声→状況、イメージという回路を逆出力して状況、イメージ→英語音声という回路を構築することで、英単語の瞬間的な発話が可能になります。
両回路の構築と同時に英単語の品詞は必ず覚えておきましょう。加えて不規則動詞の活用や、more/most型の比較級/最上級をもつ形容詞や副詞も確認しておきましょう。
世界一わかりやすい中学英単語
最初の英文法学習は上手くいったでしょうか?ここからは「世界一わかりやすい中学英単語」を用いて語彙学習をスタートさせます。
すでに「大岩もう一度」で最も基本的な単語については確認しました。ここでは中学レベルの基本英単語を網羅的に学習していきます。
記念するべき1冊目の英単語帳として「世界一わかりやすい中学英単語」を選んだ理由と学習する際の注意点について確認しておきましょう。
- 1200語に掲載数を絞っているので最初の1冊として完走しやすい。
- 各単語を掘り下げる解説があり、接辞などの深い知識が手に入る。
- 各単語の例文から重要な語法を学ぶことができる。
- 例文のSVOC構文解析で英文解釈の基本が学べる。
- 最新のトピックも意識したチャプターがある。
- 「英語リスニングの鬼100則」で発音記号を学習してからスタートしましょう。
- SVOC構文解析に関しては、「中学英語をもう一度はじめからていねいに」に掲載されている読解問題の構文解析が自力でできるようになってから取り組むと良いでしょう。
世界一わかりやすい中学英単語【難関高校対策編】
「世界一わかりやすい中学英単語」シリーズの2冊目です。やるべきことは1冊目と同様です。
高校入試ランク順中学英熟語450改訂版
英熟語に関しても、基本となる学習方法は英単語と同じです。英単語に比べて量も少ないので、短期間で覚えてしまいましょう。
★ 八澤のたった7時間で英文解釈
これまで中学生レベルからうまく接続できるような英文解釈の参考書は少なかったのですが、この「八澤のたった7時間で英文解釈」はそのような状況を変えてくれそうです。
語彙を含め前提となる文法知識も最小限になっているので、中学生が本格的に高校受験の勉強を開始するくらいの段階で使用することができます。9
初心者が市販の参考書で独学する際に度々生じる問題として、参考書で学んだことを暗記して実践で使える知識にまで昇華させるプロセスが抜け落ちてしまうという問題が挙げられます。
本書はそのような問題を解決しようとする努力が感じられます。何を覚えれば良いのかを絞り、具体的にその知識を覚える作業を参考書の中で課し、さらに実践の中で使用するまでの手順を示しています。これらの流れは新しい知識をインプットする方法として非常に理にかなったものになっています。
■【英語学習の道標 ④ 】新しい知識のインプット方法
新しい知識を学ぶ時には、正しい順序があります。ここでそれらをまとめておきましょう。
新しい知識のインプット方法
- 参考書などで重要なポイントを整理し暗記
- 簡単な問題でアウトプットしてみる(1問1答)
- 重要ポイントを実践で使える形で覚える(知識の関連性、適用条件・範囲など)
- 複雑な問題でアウトプットしてみる
何を覚えれば良いのかを選別し、それを実践で使えるように暗記する。そして、それをいつでも取り出せるように訓練する必要があるわけです。
多くの市販教材は重要なポイントを整理してくれますし、簡単な例題でその知識の確認をしてくれます(1.と2.は満たされる)が、3. と 4. のプロセスが欠けていたり、学習者がそのプロセスを意識できるような作りになっていない場合があります。
新しい知識を実践の場で使えるものにするという意識こそ重要です。表面的な暗記をしたところでそのような実践的な知識は得られません。
その知識が、どのような問題・条件に対して適用可能なのかをおさえて、そのようなメタな情報を含めた知識のインプットをする必要があるわけです。
■【英語学習の道標 ⑤ 】リーディングとリスニングの学習法
初級の基礎力錬磨編が終わったら、リーディングとリスニングの演習へと突入します。実際に演習に進む前に、正しい学習手順を確認しておきましょう。
リーディング(一部ライティング)の学習法
まずは制限時間内で問題を解いて下さい。長文を読むときは英語の語順のまま理解していくように意識します。これはチャンクリーディングと呼ばれ、英文を意味のカタマリごとに読み下していく方法です。日本語と英語とでは語順が異なるので、このような意識づけをしていく必要があるのです。返り読みをしないように注意して読み進めましょう。
答え合わせをする前に、もし手付かずの問題があれば、時間制限なしで終わらせてください。時間をオーバーした場合は、オーバーした時間をメモしておきましょう。
次に答え合わせを行い自己採点します。英作文の問題については、初級段階から気にする必要はないのですが、気になるようなら ChatGPT などを使用して、文法や表現のミスを確認しておきましょう。
自己採点が終わったら、解説を確認しつつ、文法知識の弱点を炙り出します。また、長文の中に文構造がわからない箇所がなかったかを確認して下さい。
わからなかった英文が特定できたら、チャート式やスーパーステップ赤を使って関連する文法を復習します。そもそもどの文法事項が関連するのかがわからない場合は、英作文の確認と同様に、ChatGPT にその英文を入力して、文法的な解説をしてもらいましょう。
ChatGPTによる文法解説が完全ではなくても、関連する英文法事項さえわかればが参考書で調べることができます。調べた内容は復習用ノート10に書き出すなどして、復習がやりやすい状態をつくっておきましょう。(教材によってはSVOCMが振っていませんが、自力でSVOCMがわかる状態にしておく必要があります。)
知らなかった英単語・熟語も復習用ノートに書き出しておきましょう。単語帳と熟語帳で調べて載っていれば単語帳と熟語帳にチェックをつけておきます。載っていない単語・熟語であれば辞書で調べてノートに意味をメモしておきましょう。
最後にもう一度長文全体をチャンクリーディングで読んでいきます。全訳を参考にしながら、曖昧なところがなくなっていれば復習の第一段階は完了です。
続いて、学んだ英文の構造をパターンとして認識し、それを意識下へと沈めていく段階に入ります。これは英文の処理を自動化するためのプロセスです。
最初は文法や構文を意識しながらゆっくりと声に出して読んでいきます。(音声を確認してネイティブの発音を真似しましょう)
次第に内容にフォーカスした読み方にシフトしていきます。その際は返り読みをせず、チャンクリーディングで読んでいきます。これも声に出して音読しながら取り組むと良いでしょう。声に出していれば返り読みしづらくなりますし、日本語を頭の中から追い出せるためです。
リスニングの学習法
リスニングに関しても、まずは問題を解いてから、音声スクリプト(台本)を使ってリーディングと同様の学習を行います。ただし、リスニングの場合には「英語音声を正確に聞き取る」ことが最初のステップですので、聞きとれていなかった箇所を特定して、なぜ聞こえなかったのかを分析する必要があります。
音声分析は「リスニングの鬼100則」で学んだことを応用して行います。音の脱落、リンキングなどが起きていないかを分析してください。その分析が終わったら、もう一度音声を聞いて、聞きとれるかを確認します。
最後に、途中で音声を止めながら、リスニング音声と同じ発音ができるように声に出して真似をしてみましょう。真似した後で、通しで聞いてみてください。音声がクリアに聞こえていたら第一段階は合格です。
次に音声を意味のカタマリごとに止めながら、英文の意味をイメージ(チャンクリスニング11)していきます、最終的には通しで聞いてみて、英文の意味を英語の語順のままイメージできればリスニングの復習は完了です。
☆ 番外編:ブログ式総合英語 〓TRINITY〓
『八澤のたった7時間で英文解釈』など、中学レベルからでも取り組めそうな英文解釈の教材は少しずつ登場していますが12、中学レベルから高校受験レベルまでの英文法、英文解釈、英語長文読解をうまく総括しつつ、高校レベルの英語リーディングに接続してくれるような教材は今のところ見当たりません。
「無ければ作ればよい!」とは誰の言葉でしょうか?何でこんな大変な教材作りをしないといけないのか...
はい!なので作り始めました(笑)まだまだ修正するべき箇所も多く、荒削りな状態ではありますが、初中級レベルからはじめて、共通テスト英語リーディングが楽に読めるレベルまでみなさんの英語力を鍛え上げる講座になる予定です。
閲覧数が増えて、需要があるようであれば、更新頻度を爆上げしていくので、たくさんの人がこのシリーズに取り組んでくれることを期待いたします。
英語長文レベル別問題集1超基礎編【改訂版】
「英語長文レベル別問題集1超基礎編【改訂版】」を使ってリーディングの演習を開始します。学習の進め方は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
英語長文レベル別問題集2初級編【改訂版】
「英語長文レベル別問題集1超基礎編【改訂版】」が終わったら、「英語長文レベル別問題集2初級編【改訂版】」を使ってリーディング力をさらに伸ばしましょう。学習の進め方は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
■【英語学習の道標 ⑥ 】 リスニング入門〜発音とチャンクリスニング〜
リスニングに必要な能力は次の2つに大別されます。
- 英語の音を正確に聞き取る力
- 英語を英語の語順のまま理解する力
リスニングのリーディングとの大きな違いは、1度聞き逃してしまうと返り読みのようなことはできないということです。1度で正確に音を把握する必要があります。
正確に英語の音を把握するためには、英語を構成する音素を知っておくことが大前提です。漠然と聞いていても英語に使われる音を知らなければ、それを意味のある音として把握できません。
小さな子供であれば、その音を自然と学ぶことも可能ですが、中学生にもなればその能力はほぼ失われています。だからこそ、学ぶのです。
あらゆる言語に使用される音を表すための記号があります。それがIPA(International Phonetic Alphabetの略)、日本語で「国際音声記号」です。俗に発音記号と呼ばれるものです。
英語もIPAを使って全ての音を表すことができます。
英語には日本語にはない発音があります。それに加えて、英語のつづりと発音は一致しない場合があります。そこで、英単語の正確な発音を1つの記号体系で書き表してその発音を正確に記述する必要性があるわけです。
IPAはその記号体系の役割を果たします。まずは英語の音に対応するIPAだけを学びましょう。
IPAを学んだら、英単語帳や辞書を使って単語ごとの発音を学ぶことができるようになります。
これで英語の音を正確に聞き取る準備は完了したのでしょうか?残念ですが、まだやるべきことがあります。
英単語の発音を正確に把握できても、英文になると各単語の発音はいくつかの法則に従って変化してしまいます。その音声変化の法則を学んでおく必要があるのです。
- 発音記号を学び、英語にあって日本語にない発音を学ぶ
- 音声変化の法則を学ぶ
これらがリスニングの訓練を開始するための前提条件となります。
「英語を英語の語順のまま理解する力」は聞き取った英語の音を、意味のカタマリごとに、イメージ化していく力と言い換えることもできます。
これはリーディング能力とほぼ同じで、リーディングでも直読直解するための頭の使い方はリスニングと同様なのです。リーディングの直読直解能力が鍛えられるほど、リスニングの力も伸びていくと言えます。
リーディングではそのような読み方をチャンクリーディングと言いましたが、ここでは同様のリスニング方法をチャンクリスニングとでも呼んでおきましょう。13
目で見て英文を処理するのか、耳で聴いて英文を処理するのかという違いはありますが、ひとたび英文内の意味のカタマリを認識できれば、どちらも脳内での処理方法は似通ってくるわけです。
- 聞き取った英語の音を、意味のカタマリごとに、イメージ化する力(チャンクリスニング)
英語リスニングの鬼100則
「リスニングの鬼100則」は英語の音を正確に聞き取る方法を英語初心者向けに丁寧に解説してくれている優れた指南書です。まずは1章〜3章を使って日本人の英語学習者にとって重要な音とそれに対応した発音記号を学習しましょう。
4章以降に関しては、リスニング学習の進み具合に応じて、必要な時に学んでいくのがおすすめです。重要なことは実践と理論のバランスです。
全国高校入試問題正解英語
公立高校の過去問を使ってリーディングとリスニングの練習をします。私立高校の過去問はやらなくても構いません。
2日で1つの過去問を解いて復習まで終わらせます。学習の進め方については【英語学習の道標 ⑤ 】を参照してください。
この演習を通して、公立高校の過去問で85%程度の得点率を安定して取れるようになれば、初級は卒業です。
英語長文難関攻略30選
高校入試特訓シリーズの英語長文問題集3冊を使ってさらなるリーディング演習を行います。ただし、このステップはオプションになります。公立高校の過去問演習が終わったら、中級の学習に入って構いません。
「英語長文難関攻略30選」「英語長文テーマ別難関攻略30選」「英語難関徹底攻略33選」の3冊は、難関国私立高校を受験する場合(もしくはやることがなくて暇すぎる場合)にのみお使い下さい。
学習の進め方については【英語学習の道標 ⑤ 】を参照してください。
英語長文テーマ別難関攻略30選
オプションリーディング演習の2冊目です。難関国私立高校を受験する場合(もしくはやることがなくて暇すぎる場合)にのみお使い下さい。
学習の進め方については【英語学習の道標 ⑤ 】を参照してください。
英語難関徹底攻略33選
オプションリーディング演習の3冊目です。難関国私立高校を受験する場合(もしくはやることがなくて暇すぎる場合)にのみお使い下さい。
学習の進め方については【英語学習の道標 ⑤ 】を参照してください。
■【英語学習の道標 ⑦ 】実践で使える英文法 ②:パターンプラクティス
「パターンプラクティス」とは、あらゆる言い回しの型を実践で使えるようにするための練習方法で、スピーキングやライティングのための基礎練習としておすすめです。14
まず練習の核になる英文を用意します。その英文には身に付けたい「文法」「構文」「表現」がすべて含まれています。
その核となる英文を使って、単語による「文の置換」、形容詞・副詞などを使った「文の拡充」、「文の転換」(肯定文から否定文、平叙文から疑問文、能動態から受動態など)などが瞬時にできるように訓練します。
これらの訓練を通して、単なる知識としての英文法・構文などを実践で使える状態にもっていくのがパターンプラクティスの目的です。
今回の参考書ルートでは、「英語のハノン」シリーズを用いて徹底的なパターンプラクティスを行ってもらいます。従来の受験英語では「実践で使える英文法」という視点が欠如していました。
例えるならば、足し算や引き算の概念だけ知っていて、いちおうの計算もできるものの、計算ドリルで計算の訓練を積んでいないため実践では役に立たない計算力しかない状態だったわけです。つまり、英文法についてもドリル演習が必要というわけです。「英語のハノン」シリーズは、計算概念の解説(=文法の解説)がついた計算ドリルだと思ってください。
英語のハノン初級
「英語のハノン初級」からスピーキングとライティングの訓練が開始します。徹底したパターンプラクティスで実践で使える英文法を身につけましょう。
「英語のハノン」シリーズは、「項目ごとの英文法解説」と「2種類のドリル演習(パターンプラクティス)」から構成されます。
Consecutive Drill (連続ドリル)では、単語による「文の置換」を口頭で行います。
また、One-Step/Two-Step/Three-Step Drill(1段階/2段階/3段階ドリル)では、「文の転換」(肯定文から否定文、平叙文から疑問文、能動態から受動態など)を行います。(1段階ドリルでは1段階の変換、2段階ドリルでは2段階の変換)
最後に「英語のハノン」シリーズにおける学習の進め方を確認しておきましょう。
- 英文法の解説パートを読んで理解する。
- 2種類のドリル演習を、指示通りに、繰り返し練習する。
シリーズ全体を通してやるべきことは明確なので、パターンプラクティスの単調さにさえ耐えることができれば、挫折のリスクは低いでしょう。(多くの人はこの単調さで挫折するのですがね…)基本1日1〜3ドリル程度の練習にとどめておくのが継続のコツです。どんなに体調が悪くても、時間がなくても、気乗りしなくても1日最低1ドリルはやる習慣をつくりましょう。
【注意】初級〜上級を通しでやらないと英文法全体を網羅できません。必ず中級と上級もやりましょう。
英語のハノンフレーズ編
「英語のハノン」シリーズのフレーズ編です。まずは初級〜上級の3冊を優先して下さい。おそらく初級編だけでも負荷が大きいです。参考書ルートのスリム化を図りたい場合、フレーズ編は省略候補になります。
■ タイムテーブル -初級-(1年プラン)
中級:高校初級〜共通テストレベル
ジーニアス英単語2200
「GENIUS動画英単語2200」という「ジーニアス英単語2200」の全単語に解説動画がついた学習用アプリ(有料)があります。
例文の構文解析まで解説してくれるので、初級英単語帳の「世界一わかりやすい中学英単語」と合わせて使えば、それだけで英文解釈の基礎(特に動詞の語法)が身につくでしょう。派生語情報まで解説してくれるのも推しポイントです。単語帳と併せて積極的に活用しましょう。
ジーニアス英熟語1000
「ジーニアス英単語2200」の姉妹本です。「GENIUS動画英単語2200」と同じく、「GENIUS動画英熟語1000」という全英熟語に解説動画がついた学習用アプリ(有料)があります。
こちらも例文の構文解説を丁寧にしてくれるので、動画英単語とセットで学習することをお勧めします。
★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本
「大岩もう一度」や「八澤の7時間」などで英文法・英文解釈の入門レベルの学習を行いましたが、より複雑な英文に対しても理論的に構造を説明できるように、もう少し高いレベルで英文法を学び直しながら英文解釈のための知識を精緻化していかなければなりません。
そこで登場するのが「基本文法から学ぶ英語リーディング教本」通称「黄リー教」です。実を言うと、この本は英語初学者であっても根気さえあれば学べるように書かれているのですが、現実的には1冊目からこの本に取り組むのは敷居が高いので、「八澤の7時間」などを準備編として指定しています。
「黄リー教」は、「八澤の7時間」では大味な説明だけだった文法事項について、時にくどいほど丁寧に解説してくれる本です。分量もあるので、周回するのは大変ですが、まずは高速で1周読み込んで下さい。
そして2周目に入る前に、補助教材である「黄リー教 徹底反復」を使って、重要ポイントを思い出しましょう(自力で思い出そうとすることが重要)。「八澤の7時間」のミニブック的な機能を持った教材です。
実践編の学習で基本事項の暗記が完了したら、「黄リー教 無印」をもう一度丁寧に読み直しながら、「黄リー教 実践編」を使って仕上げを行います。
なお、これ以後の学習において、英文法及び英文解釈の基礎に立ち帰る必要がある時には、「黄リー教 徹底反復練習」をやり直すのが効率的です。
学習の基本は、自力で思い出すという行為(リトリーバル学習)にあります。漫然と読むだけでは長期的な知識は身につきません。「黄リー教 徹底反復練習」はこのリトリーバル学習の教材として最適です。
■【英語学習の道標 ⑧ 】リトリーバル学習と分散学習
リトリーバル学習という用語が登場したので、少し参考書ルートの本筋からは離れて、日々の学習をより効率的にする学習方法について考えてみたいと思います。
私たち日本人(の多く)は小学生の頃からまじめに学校や塾の授業を聴いて、宿題に取り組み、学校のテスト勉強から受験勉強まで、さまざまな勉強を課せられてきました。
それにも関わらず、私たちがこの「勉強」というものに対して持っている哲学はかなり原始的で素朴なものに過ぎません。時に体育会系的な精神論で、ひたすら長時間学習することが正義のように言われ、終いには「四当五落」15などという奇妙な言葉まで生み出される始末です。
せっかく人生の貴重な時間を使ってまで勉強しているのですから、素朴な精神論などではなく、よりスマートな科学的勉強法を取り入れたいとは思わないでしょうか?
科学的な見地から正しいとされる勉強法について知っておくことは、何かと忙しい現代人にとって、必須の知識となるはずです。
ここでは近年注目されている科学的なエビデンス(根拠)に基づく学習法を2つ紹介します。
- リトリーバル学習:学習した内容を、ノートやテキストなどを見ずに、自力で思い出す学習方法。
- 分散学習:試験直前にいっきに知識を詰め込むのではなく、学習のインターバル(間隔)を設けて、複数回に学習を分散する学習方法。
リトリーバル学習(retrieval practice)はいざ取り組んでみると大変負荷が高い学習であることがわかります。その負荷こそが脳を能動的に使っている証なのかもしれません。
一方で、分散学習(spaced practice)の方は、少し忘れた頃に思い出すというのを繰り返すイメージです。完全に忘れる前に思い出すことで、脳はその記憶を重要なものと認識してくれるようです。
★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本 徹底反復練習
★ 基本文法から学ぶ英語リーディング教本 実践演習
★ ALL IN ONE Basic
今回の参考書ルートは学校での授業(教科書学習)を前提としていません。そこで「ALL IN ONE Basic」が高校初級の教科書代わりになります。本書はよく練られた例文を使うことで、「単語」「熟語」「文法」「構文」を同時に学べる仕様になっています。
少し長めの例文には直訳と意訳が付いていて、直訳があることでチャンクリーディングを意識した学習ができます。全例文について自力で文法・構文解説できるようになることが目標です。本書の指示に従ってじっくりと学習を進めて下さい。
本書には続編として無印版も存在します。そちらも高校中級から大学受験レベルまでの英語を総合的にカバーする優れものです。
★ 英文熟考上
「英文熟講上」は英文解釈技術に対する習熟度を測るためのテストです。ここまでの教材で学んできた構文解析の技術を、少し複雑な英文に対して適用してみることで、次の課題を発見することが目的です。
まずは自力で構文解析(SVOCM解析)を行い、直訳と意訳を作ってみます。それらが模範解答(構文解析駅を含む)と比べてどうなのかを分析して下さい。
知らない表現や構文知識が出てきたら、チェックして覚えます。知らない内容が半分以上になった場合、これまでの教材のやり込みがかなり足りません。そのような場合には、「黄リー教」シリーズと「ALL IN ONE Basic」の復習をしてから再度挑戦することをおすすめします。
動画英文法2700
アプリ版の英文法問題集です。英文法知識を試験向けに鍛えてくれます。全部で2700問と数は多いですが、すべての問題に対して解説動画があるのと、その中で全例文の構文解析をしてくれるので高い学習効果が期待できます。
英文法の鬼100則
「英文法の鬼100則」は、認知言語学の見地から英文法を解説してくれる参考書です。
ここまでの教材は受験文法に特化していて、英文法に対する解像度があまり高くない部分があります。この問題を解決し、英文法に対する理解を深める一助になってくれるのが本書の強みです。
英文法の理解を深められる素晴らしい本ですが、試験対策としての即効性は低いです。したがって、時間がない人は本書の学習を省略することをおすすめします。
英文法の鬼1000問
「英文法の鬼1000問」は「英文法の鬼100則」の姉妹本です。「英文法の鬼100則」の内容をさらに深めたい学習者におすすめの一冊です。
試験対応という意味では「動画英文法2700」だけで十分です。したがって、参考書ルートのスリム化に際しては、本書は省略候補となります。
関正生のThe Rules英語長文問題集1入試基礎
中級のリーディング演習は「The Rules」の1巻から開始します。「The Rules」シリーズはすべての長文に対してSVOC構文解析とチャンクリーディングの確認にも使える音読用スラッシュがついています。加えて音声も用意されています。
したがって、【英語学習の道標 ⑤ 】で解説したリーディング勉強法と相性の良い参考書シリーズであると言えるでしょう。
関正生の英語長文ポラリス0基礎レベル
「ポラリス」シリーズは「The Rules」シリーズの演習量不足を補うのにちょうど良い問題集です。近年の入試傾向を分析した上で、受験生にとって演習価値が高い長文ばかりを集めています。著者も同じなので、解説にも一貫性があります。
「The Rules」の1巻からスタートして、「The Rules」と「ポラリス」を交互に使用すると演習効果が高くなるのでおすすめです。両シリーズ合計で94個の長文読解演習が可能です。
今回は「The Rules」シリーズの第1巻で学んだルールが使えないかを考えながら問題を解いていきましょう。具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
英語長文レベル別問題集3標準編【改訂版】
【英語学習の道標 ⑤ 】のやり方に従って学習しましょう。「レベル別」シリーズのレベル3以降は演習量の確保のために採用しています。
時間がない場合には、「The Rules」と「ポラリス」両シリーズの学習を優先して下さい。そちらを優先した方が演習効率は高くなるでしょう。
参考書ルートをスリム化する場合は、「英語長文レベル別問題集3標準編【改訂版】」を省略しても構いません。
英語長文レベル別問題集4中級編【改訂版】
【英語学習の道標 ⑤ 】のやり方に従って学習しましょう。
レベル3と同様の理由から、今回も「The Rules」と「ポラリス」両シリーズの学習を優先して下さい。
参考書ルートをスリム化する場合は、「英語長文レベル別問題集4中級編【改訂版】」を省略しても構いません。
★ ALL IN ONE
「ALL IN ONE」は、「ALL IN ONE Basic」の続編として、高校中級から大学受験レベルまでの英語学習を総合的にサポートしてくれる良書です。
本書の指示に従ってすべての例文を学習して下さい。Basicの時と同じく、すべての例文の文法・構文解説ができるようにして下さい。
1冊仕上がる頃には、中級からの卒業が見えてきます。「単語」「熟語」「文法」「構文」のすべてをバランスよく鍛えられます。
★ 英文熟考下 改訂版
「英文熟講下」も、上巻と同様に、英文解釈技術に対する習熟度を測るためのテストとして使用するところから始めます。
SVOCM構文解析を自力でして、直訳と意訳をそれぞれ作ります。それらを模範解答と比べることで、実践レベルまで仕上がっていない文法・構文知識を見つけ出して、それらを復習するようにして下さい。
わからない問題が多すぎるようであれば、これまでの教材に戻ってやり直す必要が出てきます。その場合は、「黄リー教」シリーズ、「ALL IN ONE Basic」、「ALL IN ONE」の復習をしてから再挑戦することになります。
関正生のThe Rules英語長文問題集2入試標準
「The Rules」の第2巻です。このレベル帯からは共通テスト英語リーディング対策が視野に入ってきます。この問題集と同じレベルの長文がスラスラと読めるようになれば、共通テストの長文も苦労せずに読めるようになるでしょう。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
関正生の英語長文ポラリス1標準レベル
「ポラリス」シリーズの2冊目です。「The Rules」シリーズの第2巻までで学習した内容を実践する意識を持ちましょう。この問題集も、「The Rules」の1巻と同じく、共通テスト長文の対策が視野に入るレベル感です。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
■【英語学習の道標 ⑨ 】共通テストと情報処理テクニック〜スキミングとスキャニング〜
ここまでの教材をしっかりと消化できていれば、共通テストレベルの基礎力は十分に身についています。しかし、基礎力はあっても実際に制限時間内に高得点を取るためには、いくつかのテクニックを学んでおく方が良いでしょう。
旧センター試験から共通テストに変わり、発音やアクセントの問題が消え、文法も直接問われることがなくなりました。そのような形式面での変化も重要ですが、一番大きな変化は、分量の大幅な増加です。
共通テストリーディングの分量
共通テストリーディングは、2022年度から2024年度まで、3年連続で総語数6000語を超えました。旧センター試験の実に1.5倍の語数になります。英語を英語のまま処理できる力がないと到底太刀打ちできない分量です。
問題を解いたり、マークしたりする時間を考えると、時間内にすべての問題を解き切るためには150wpm(words per minute/1分あたりの処理単語数)近い速読が求めらることになります。
出題される英文の難易度はセンター試験と比べても大差ありませんが、とにかく量が多い。センター試験で20分以上残して満点近く取れていた人でも、共通テストの量になると、初見で対応し切るのは難しいでしょう。16
共通テスト英語リーディングは英語の試験というより、情報処理テストのような感じです。そのようなテストを共通テスト英語で実施することの是非は問われて然るべきかと思いますが、そのことは一旦置いておきましょう。
個人的な経験から言わせてもらうと、大量の英文を処理していく能力というのは大学入学後にこそ求められるものです。
英語で大量の論文やテキストのすべてをつぶさに読み込んでいくようなことは物理的に不可能です。いくら時間があっても足りなくなります。もちろん最重要文献については、すべてを読み込む場合がありますが、基本的には共通テスト英語で求められているような効率の良い処理をしていくわけです。17
その情報処理テクニックが次のスキミングとスキャニングです。
スキミングとスキャニング
スキミング(skimming):文章の大意を素早く掴む技術。動詞の skim(〜をすくいとる)から。各段落の最初の文だけを読んだり、見出しなどを参考にしたり、いわゆる飛ばし読み、流し読みを行います。
スキャニング(scannig):文章から必要な情報だけを抜き出す技術。動詞の scan(〜を探し出す)から。キーワードとなる単語だけを探し出すなど。
共通テストでは、ウェブサイト風の英文や、視覚情報(図やイラスト)を含む文章が出題されています。このような問題ではスキャニングを積極的に活用し必要な情報を抜き取ることが求められています。
その他の長文問題に対してはスキミングを活用して…と言いたいところですが、これは正直かなりキビしい要求であると思います。基本的には全文を読む前提で、できる限り読み返しをしないというスタンスで臨むべきです。
速く読むために全文を読む。ずいぶんと逆説的ですが、断言します。全文を読み切る力がない人が行うスキミングほどリスクが高いものはありません。
そこで長文読解の効率化を達成するための方策としては、スキミングではなくパラグラフリーディングの訓練を積むことをおすすめします。こちらは上級で扱う内容ですが、共通テストレベルでも求められる考え方になります。
最後に、これらの読解テクニックはいわゆるマクロな読み方に属するものですが、その前提として一文一文を正確に読み解く技術(精読=ミクロな読み方)があることを忘れないようにしてください。
ミクロな読み方(精読)を身につけた上でマクロな読み方を訓練するべきであって、その逆ではないということです。
2025年用共通テスト実践模試(1)英語リーディング
最新の共通テストリーディングの問題と予想問題から構成された問題集です。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照しつつ、【英語学習の道標 ⑨ 】で学んだスキャニングを意識しながら問題に取り組みましょう。
この段階で7〜8割の得点率が目標です。8割超えを安定して取るための実力は、共通テストレベルを超えた上級パートの学習で身につけます。18
2025年用共通テスト実践模試(2)英語リスニング
最新の共通テストリスニングの問題と予想問題から構成された問題集です。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照してください。
改訂版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本
今回の参考書ルートにおいて、ライティングとスピーキングの学習は「英語のハノン」による文法運用力の養成が核になっています。あとは試験対策的に必要な表現を拾い集めていく作業です。
「決定版 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本」(竹岡英作文)は、汎用性の高い表現を集める役割を担っています。この1冊だけで大学受験で出題されるあらゆる英作文問題に対して広く応用できる表現を覚えることができます。
「英語のハノン」で1文1文の構成力を実践レベルまで上げ、本書で汎用性の高い表現力を身に付ける。あとは英単語・熟語帳やその他の学習で手に入れた語彙を実践で使える状態にする努力が求められます。
英検の過去問や二次対策用の問題などで、さまざまな英作文テーマに対して自分なりの解答を作成してください。それを ChatGPT などでAI添削し、正しい解答のストックを増やしていくことをおすすめします。
【注意】英語エッセイのルールについては別記事で扱う予定です。これを学ぶことで英作文全体の構成を学ぶことができます。
英語のハノン 中級
「英語のハノン」シリーズの中級編です。基本的に「英語のハノン初級」と進め方は同じです。
英検2級 英作文&面接完全制覇
「英検2級 英作文&面接完全制覇」は「竹岡英作文」の補完的な役割を果たします。「竹岡英作文」が汎用性の高い表現を集めたものだったのに対して、本書は英検2級に出題される頻出テーマに対する模範解答例として、150個ほどの「コンテンツブロック」が与えられています。
模範解答例をすべて覚えようとするような勉強の仕方は挫折するのが目に見えています。まずは自分が使いたい「コンテンツブロック」を実践演習で使ってみるところから始めましょう。
それで満足できない人だけ、コンテンツブロックを音読用教材として、何度も繰り返し音読しながら、自然と暗唱できる状態まで持っていく学習方法がおすすめです。開本状態での音読から閉本状態での音読にシフトしていくイメージです。
■ タイムテーブル -中級-(1年プラン)
上級:難関大入試〜最難関大入試レベル
■【英語学習の道標 ⑩ 】大学受験と英検に必要な英単語数
大学受験と英検に必要な英単語数を学習の目安として整理しておきます。大学受験において最高レベルを目指すのであれば英検準1級レベルは必須です。
試験名 | 必要とされる単語数 |
英検準2級 | 2,600語〜3,600語程度 |
英検2級 | 3,800語〜5,100語程度 |
大学共通テスト | 4,000語〜6,000語程度 |
難関大学入試 | 6,000語〜7,000語程度 |
英検準1級 (最難関大学入試) | 7,500語〜9,000語程度 |
英検1級 | 10,000語〜15,000語程度 |
速読英単語 上級編 改訂第5版
上級ランクの英単語帳としては次の「出る順で最短合格!英検準1級単熟語EX 第2版」を優先して下さい。時間に余裕がある場合に限り、「速読英単語 上級編 改訂第5版」も併用していきます。
このレベル帯の英単語になると、雑多なリーディング演習だけでは出会う機会が限られてくるので、本書のように実際の長文内での使用例を示してくれる参考書は貴重です。まずはリーディング素材として楽しんでから、各見出し語の暗記に取り組みましょう。
出る順で最短合格!英検準1級単熟語EX 第2版
大学受験英語において、特に高い語彙力が求められる早稲田大学や慶應義塾大学の受験対策には、英検準1級範囲の英単語までカバーしておくことが推奨されます。
従来は「パス単」シリーズの準1級がおすすめされることが多かったのですが、内容が改定されて、掲載語彙のレベルが下がってしまったため、現在は「EX」シリーズの準1級がおすすめです。
上級パートの学習が早く仕上がりそうなら、同シリーズの1級までやっておくと安心です。(大学受験では最難関私大志望者のみ)
現在は準1級レベルまででなんとか対応できます(?)が、最上位私大の英語入試の傾向を鑑みるに、当たり前のように英検1級レベルの単語まで要求される時代もすぐそこかもしれません。
英語の構文150 UPGRADED 99 Lessons
「英語の構文150」は、初級〜中級で学んだ構文を総復習し、そこで学べなかった構文についても補完できる参考書になります。
- すべての基本例文について、構文解説(SVOCM振りと解説)を何も見ずにできるようにする。
- すべての基本例文について、日本語を見て英語がスラスラでてくるようにする。
派生的な構文の学習とEXCERCISESの問題については、基本例文の構文をすべて覚えてから取り組んでください。
派生的な構文まで完璧にできれば、構文の知識で困ることはほぼなくなりますが、稀にしか出てこない構文も散見されるので、派生構文の学習優先度は低いでしょう。
基本構文の学習がひととおり終わったら、残りは辞書的な使用にとどめておくのがおすすめです。問題演習で知らない構文が出てきたらこの参考書で調べて、その構文が載っていたらその都度覚えましょう。
基礎からの新々総合英語(チャート式シリーズ)
英文法の総合書(総合英語)を最低でも1冊用意しておきましょう。総合英語は中級パート以降で英文法・構文の辞書として活用して下さい。
そして、参考書ルートの上級パートが半分くらいまで消化できた段階で、1度通読しておくこともおすすめします。
総合英語系の参考書は、通常辞書的な使用に限られると思われがちですが、通読して自分の弱点分野の知識を補強するという使い方をすることで、そのポテンシャルをフルに発揮します。通読と言っても、最初から順番に読む必要はなく、自分の苦手な分野から読み進めることをおすすめします。
「基礎からの新々総合英語」は同種の参考書の中でも特に通読がしやすい1冊です。解説が浅過ぎず深過ぎずちょうどよい塩梅(あんばい)になっています。
ENGLISH EX
「ENGLISH EX」は英文法・語法の網羅系問題集です。問題と解答・解説が見開き1ページにまとめられているのが特徴です。
「空欄補充」「誤文訂正(下線付き)」「誤文訂正(下線なし)」「適語選択」「整序問題」など、あらゆる問題形式に対応できるところも優れています。
かなり細かい知識まで網羅されているので、英文法・語法問題対策の総仕上げとしてお使い下さい。
英文読解の透視図
英文解釈の学習もいよいよ最終段階19です。
「英文読解の透視図」は、「要素の移動」に始まり、「省略」「倒置」「挿入」「強調」などのいわゆる特殊構文、「仮定法」「比較」の注意するべき表現を実際の入試英文を使って解説して行きます。これらは英語中級者が見落としがちな「英文を難しくする要素」です。20
英文解釈の力を、中級者から上級者にまで引き上げてくれる最高の参考書です。掲載されているすべての英文に対して文法解説ができるようにして下さい。
そこまでやり切れば、京都大学などで出題される最難関入試英文にくらいつくことが可能になります。
■【英語学習の道標 ⑪ 】ミクロな読み方とマクロな読み方
英語長文の学習というと、「文法」→「英文解釈(SVOCM構文解析)」→「長文読解演習」という学習順が一般的です。
この順番で学習していけば、1文1文の構造を理解して読み進めていくことはできるようになるでしょう。
しかし、多くの人が長文問題の演習を始めたところで、様子がおかしいことに気が付きます。1文1文の理解はできているはずなのに、長文全体の内容理解が曖昧になることがあるのです。
実際、全国模試などでも、通常の勉強方法だけでは偏差値60ほどで頭打ちになることが多いのです。偏差値70を取る人ができていて、偏差値60の人が見落としていることは何なのでしょうか?
その答えは、英語長文に対する俯瞰的な視点の有無にあります。
- ミクロな読み方:いわゆる英文解釈的な読み方。1文1文の構造を理解りながら読み進めていく方法。
- マクロな読み方:長文全体を俯瞰して読み解く方法。各パラグラフごとの主張を掴み、パラグラフ相互間の関係を分析しながら読む方法。(テーマの背景知識なども重要となる)
ミクロな読み方については多くの参考書で説明がありますし、塾ではその方法を丁寧にレクチャーしています。
しかし、マクロな読み方についてはあまり取り上げられることがありません。それにも関わらず、高偏差値帯のトップ層はそのような読み方を身につけています。
教えられずに、マクロな読み方ができる人は、素の国語力が高い場合がほとんどです。マクロな読み方というのは、日本語の評論文を読む時に用いている方法とほぼ同じです。
なので、この読み方は英語の授業ではなく、(塾の)国語の授業で教えられていると言えるかもしれません。「国語力こそ全ての学習の基礎である」というのはまったく誇張ではないのです。21
それでは塾の現代文の授業をとる必要があるのでしょうか?
さすがにそこまでの労力とコストをかける必要はありません。市販の教材でもマクロな読み方を説明しているものがあります。次は、マクロな読み方の核になるパラグラフリーディングが学べる参考書を紹介します。
パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編
パラグラフリーディングのストラテジーシリーズは、1文1文の英文解釈(SVOCM構文解析)ができるようになり簡単な長文なら読めるようになった人が、長文読解の解像度をさらに高めるために使う参考書です。
このシリーズでは「マクロな読み方」の中核となる「パラグラフリーディング」が学べます。全国模試の偏差値60と70の決定的な違いがここにあると言っても過言ではありません。
正直かなりハイレベルな内容を扱う参考書になりますが、ここを乗り越えると受験英語の攻略が現実的になってきます。
「パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編」では前半で「5つのストラテジー」というパラグラフリーディングの基本となる考え方を学びます。
パラグラフ(英語長文における段落)の持つ4つの特徴を前提として以下5つの内容を学びます。
- 3つの論理展開の型
- 論理展開の目印となる5つの論理マーカー
- 筆者の主張とパラグラフおよび論理マーカーとの関係(主張の探し方)
- 反復回避の3つのパターン(英語は同じ表現を繰り返しを避ける)
- 未知語の推測方法
この「5つのストラテジー」こそがマクロな読み方の最重要事項です。まずはこの「5つのストラテジー」の内容を何も見ずに説明できるようにして下さい。これらの内容を理解しないまま焦って先に進むことがないようにしましょう。
「パラグラフリーディングのストラテジー」シリーズは全3巻で構成されています。最も重要な「5つのストラテジー」は「パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編」に詳しい解説があるので、時間がない人は2と3はやらないという選択肢もありです。
パラグラフリーディングのストラテジー2 実践編 私立大対策
「パラグラフリーディングのストラテジー2 実践編 私立大対策」では「パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編」で学んだ「5つのストラテジー」を用いて、私立大入試過去問を攻略する参考書です。
私立大学の過去問演習に入る前に、「5つのストラテジー」の内容を実践で使えるように意識づけするのが目的です。
パラグラフリーディングのストラテジー3 実践編 国公立大対策
「パラグラフリーディングのストラテジー3 実践編 国公立大対策」では、「パラグラフリーディングのストラテジー2 実践編 私立大対策」と同様に、「パラグラフリーディングのストラテジー1 読み方・解き方編」で学んだ「5つのストラテジー」を実践で使う術を学びます。
国公立大学の過去問演習に入る前に、「5つのストラテジー」の内容を再確認しておきましょう。
関正生の The Rules 英語長文問題集3 入試難関
いよいよリーディング演習も上級編です。中級編までと同じようにリスニングの訓練までをセットで演習していきましょう。
「The Rules」シリーズも3冊目。登場する読解ルールも増えてきましたが、その全てを覚える必要はありません。自分が参考にできるものから優先順位をつけて学んでいけば十分です。
日本語であれ英語であれ、およそ文章を読解するという場面においては自然とできているはずの、あたりまえのルールは殊更言語化して暗記する必要はないからです。なので、「英語という言語に固有のルール」と「設問形式に対応した解法ルール」にのみ注意して学習するのがポイントです。
「The Rules 英語長文問題集3 入試難関」は、中堅私大〜難関私大(GMARCHや関関同立)レベルの長文読解問題を扱っています。これまでのシリーズと同様に、近年の入試に頻出なテーマを扱っています。設問形式に対する解法ルールも増えてきました。大事なことは、これまでに学んできた読み方を、目の前の問題に応用できないかと常に考えていく姿勢です。
関正生の英語長文ポラリス2 応用レベル
「ポラリス」シリーズの2巻では、「The Rules」シリーズの3巻までに学んだルールを実践で活かすためのトレーニングを行います。やることは1巻と同様です。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
英語長文レベル別問題集5上級編【改訂版】
【英語学習の道標 ⑤ 】のやり方に従って学習しましょう。
レベル3、4と同様に、今回も「The Rules」と「ポラリス」両シリーズの学習を優先して下さい。
参考書ルートをスリム化する場合は、本書の学習を省略しても構いません。
英語長文レベル別問題集6最上級編【改訂版】
【英語学習の道標 ⑤ 】のやり方に従って学習しましょう。
レベル3〜5と同様に、今回も「The Rules」と「ポラリス」両シリーズの学習が優先です。
参考書ルートをスリム化する場合は、本書の学習を省略しても構いません。
関正生の The Rules 英語長文問題集4入試最難関
ついに「The Rules」シリーズも4冊目(最終巻)です。
「The Rules 英語長文問題集4 入試最難関」は、最難関私大(早慶)〜最難関国公立大(東大・京大)レベルの長文読解問題を扱っています。シリーズ最終巻にふさわしい難易度の長文が並びます。新出のルールは少ないので、これまでに学んできたことを総動員して挑みましょう。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。この問題集が終われば、本格的に二次対策演習に進むことができます。
関正生の英語長文ポラリス3発展レベル
上級リーディング演習のラストを飾る1冊は、「関正生の英語長文ポラリス3発展レベル」です。「The Rules」シリーズの4巻までに学んだルールを意識しながら演習していきましょう。このレベルの長文が読めるようになれば、ほとんどの大学入試で合格点が取れるようになるでしょう。
具体的な学習方法は【英語学習の道標 ⑤ 】を参照して下さい。
英検準1級英作文問題完全制覇
「英検準1級英作文問題完全制覇」も、「英検2級 英作文&面接完全制覇」と同様に、「竹岡英作文」の補完的な役割を果たします。本書は英検準1級の頻出テーマに対する模範解答例として、200個ほどの「コンテンツブロック」が与えられています。
今回も模範解答例をすべて覚えようとするのではなく、自分が使いたい「コンテンツブロック」に絞って学習し実践問題に活かしていくことを考えてみましょう。
英作文対策を徹底したい人だけ、コンテンツブロックを暗唱用教材として使うと良いでしょう。すべてを完全に覚えられないとしても、さまざまな模範解答例を眺めるだけでも、さまざまなテーマに対する背景知識が得られるので無駄にはならない学習方法です。
英語のハノン上級
「英語のハノン」シリーズの上級編です。基本的に「英語のハノン初級」と進め方は同じです。
■ タイムテーブル -上級-(1年プラン)
脚注
- ここで紹介する参考書ルートの初級〜上級までの内容を習得した上で、別途二次対策が必要になります。 ↩︎
- 一部にアプリなどを含みます。 ↩︎
- 随時修正が入るかもしれません。特に初級の英文法と解釈の接続が現在の懸案事項です。初級の解釈本に高校範囲の英文法(分詞構文や関係副詞など)が入ってくるので、そこへの接続をどうするか…いちおう初級解釈本の中で解説されていますが、初学者が問題なく理解できるかは微妙なところです(?) ↩︎
- こちらの教材はアプリ形式かつ動画による解説付きなので、本のみの教材よりは最後までやり切るためのハードルは低いでしょう。 ↩︎
- 英和辞書は「ウィズダム英和辞典」をおすすめします。 ↩︎
- 他の参考書で代替することは可能かもしれません。 ↩︎
- 実際に英検準1級を取得するためには、別途英検の過去問演習などに取り組む必要があります。 ↩︎
- 母音とは日本語で言う「あいうえお」の音。英語には母音が20ほどあるので要注意です。日本語の「ア行」以外、たとえば「カ行」などは "k" に対応する音(子音)と母音の「あいうえお」それぞれ結びついて、「かきくけこ」という音を形成しています。子音に関しては日本語と英語で共通しているものも多いので、違っている部分ににだけ注目して学ぶのが最短の攻略ルートです。 ↩︎
- 一部高校範囲の英文法(分詞構文や関係副詞)については、本書内での説明だけでは足りないかもしれないので、別の教材での学習が必要となるかもしれません(上級教材にある総合英語の参考書を補助的に使うなど)。 ↩︎
- 必ずしもノートを使う必要はありません。スマフォで写真を撮って、復習用のアルバムを作成するのもおすすめです。(スマフォを持っていない場合はノートで十分ですが、復習ノートの作成に時間をかけ過ぎないようにしましょう。あとから復習するのが目的だということもお忘れなく。) ↩︎
- チャンクリスニングはチャンクリーディングと同じ頭の使い方をリスニングでも実行しているだけです。 ↩︎
- 厳密には高校生向けに書かれた教材なので、中学生にとっての敷居は低くないです。 ↩︎
- チャンク(chunk)とは塊の意。 ↩︎
- ここでの「型」はいわゆる基本文型だけにとどまりません。 ↩︎
- 「4時間睡眠で長時間勉強すれば受かるものも、5時間も寝ていたら落ちるだろう」という粗野な受験勉強スローガン。脳の働きと睡眠の関係を研究するまでもなく、ふつうの感覚ならおかしなことを言っていることはわかります。 ↩︎
基礎力を測るテストじゃないのかよ??こんな分量にして何がしたいの??受験生で遊んでるの??というかあの設問は何なの??↩︎- これは日本語の文献に対してふだんから行っている情報処理でもあるはずです。日本語で行っている読み方を英語でもできるようにしようという大学入試センターからのメッセージ(?)なわけですね。 ↩︎
- スポーツの基礎トレーニング方法に高地トレーニングという負荷の高いトレーニング方法があります。心肺に高い負荷がかかる環境でトレーニングを積むことで、今以上の基礎体力をつけることを目的としたトレーニングです。英語の学習も同様で、今の実力よりも上のステージでトレーニングすることで、少しずつ実力が伸びていくのです。 ↩︎
- さらに上のレベルもありますが、大学受験レベルにおいてはほぼ最高峰です。 ↩︎
- 特に1章で扱われている「要素の移動」について解説した類書は少ないので必読です。 ↩︎
- 受験英語や受験数学を指導していると、その科目固有の問題ではない国語力の問題で成績が伸びない人が大勢います。逆に、国語力が高い人は、どの科目もいっきに伸びる可能性が高いです。ここでいう国語力とは日本語で書かれた文章の論理的な構造を理解する力のことです。 ↩︎